いよいよクライマックスを迎える連続テレビ小説「舞いあがれ!」。ヒロイン・舞(福原遥)と貴司(赤楚衛二)は新たな命を授かり、2人の今後が気になるところ――。赤楚衛二に、これまで貴司を演じてきた思い、そして物語終盤の見どころについて聞いた。
――ここまで貴司を演じてきた、いまの思いをお聞かせください。
赤楚 貴司と離れるのが、さみしくてしょうがないです。演じるのが毎回楽しくて。以前、「仮面ライダービルド」(テレビ朝日系)で 1年間同じ役を演じたことはありましたが、10代から 20代、30代と、年を重ねていく役を演じるのは今作が初めてです。貴司の人生を一緒に歩んでいる感覚が強くありますね。
街で「貴司!」と声をかけていただくことも増え、そのたび、貴司を丁寧に演じようという決意を新たにしました。また、他の役を演じるときもそうですが、自分と全く違う人物の人生を演じると、「1つの選択次第でこういった人生もあったかも」と感じるんです。新たな自分が広がるような感覚もありますね。
「舞いあがれ!」の現場を離れることもさみしいです。舞ちゃんも久留美ちゃん(山下美月)も本当に温かくて、「舞いあがれ!」でご一緒することができて楽しかったです。幼なじみ 3人での思い出は......、五島の帽子を一緒に買い、そして舞ちゃんがパーカーをプレゼントしてくれて、「これを着て現場に行こう」と3人で約束したのに、ちゃんと着てきたのは久留美ちゃんだけだったこと(笑)。「幼なじみってこういうもんだよね」と笑いながら話す、3人の空気感が僕は好きですね。
――“朝ドラ”の現場を経験して、成長を感じることはありますか?
赤楚 成長かは分かりませんが、年齢を重ねた役の演じ方を意識するようになりました。声の質感を変えると、作りすぎているようにも感じられてしまうので、声質は変えずに、穏やかな雰囲気や姿勢などを意識しています。どっしりと落ち着いた姿を見せるためには、重心を重くすることも必要。プロテインを日常的に飲んで、増量をしました(笑)。
そしてなにより、コミュニケーションをとることの大切さを改めて実感しました。舞ちゃんや監督さんとはよく話し合って、疑問を解消したり、お互い考えていることを共有したりしています。そういう話しやすい環境ってすてきですよね。特に、印象に残っているのは、リュー北条さん(川島潤哉)に、酔っ払いながら説教されるシーン。そのとき演技をいろいろと試させていただいたんですが、しっかり時間を作ってくださって。本当にありがたかったです。
――互いに支え合う、貴司くんと舞ちゃんの関係性はすてきですね。
赤楚 そうですね。貴司を演じて感じる、舞ちゃんの魅力は、自分の力で一歩ずつ前に踏み出す力強さです。結婚後も変わらず、舞ちゃんらしくいてほしいと貴司も思っているのではないでしょうか。

それぞれに仕事を持ち、違う道を歩む二人ですが、ちょうどいい距離感でお互いをフォローし合う、すてきな夫婦ですね。全然けんかもしないですし。2人とも几帳面で、生活のリズムがあっているんだと思います。貴司は、トイレのふたをちゃんと閉めそうですし、靴下を脱ぎっぱなしにしたりとかしなさそうですからね(笑)。
――短歌と向き合うことで、貴司も成長しているように感じます。
赤楚 八木さんにずっと支えてもらっていたことは、貴司の中で、人生の大きなポイントになっています。そして、朝陽くんや大ちゃん、陽菜ちゃんと接していく中で、教える楽しさも見出して。自分の感情を表現することも好きですが、人と接して何かをやることも好きなんでしょうね。
子どもたちとのシーンはすごく印象に残るものが多いです。特に、短歌の宿題に悩む大ちゃんと陽菜ちゃんに告げた、「短歌作るってことはな、誰とも違う自分がここにおるで!って胸張ることやねん」というセリフ。短歌をなぜ詠むのか、これまでちゃんと言葉にしていなかったので、貴司の芯を垣間見たシーンでした。

そして、みんなに合わせて「ヤバイ」「カワイイ」「キモイ」だけ言えばやっていけるという、陽菜ちゃんに対し「言葉がいっぱいあんのはな、自分の気持ちにぴったりくる言葉を見つけるためやで」という貴司の言葉にはハッとさせられました。言葉の使い方ひとつで、人間関係もがらりと変わりますよね。たくさんある言葉の中から、自分の感情に合った言葉を探して表現する――。日本語を丁寧に使うことの大切さを改めて考えさせられました。
――最後に、今後の貴司の見どころについてお教えください。
赤楚 歌人としてもそうですが、今後、貴司の人生を左右する出来事があります。その中で、貴司のやりたいことが見えてくるなど、さらに人生が広がっていくようになります。
また、パパ役を演じるのも今作が初めてです。今までやってこなかったことを“朝ドラ”で経験できるのは幸せなこと。ぜひ、最後まで舞ちゃん、そして貴司を見守っていただけたらと思います。
1994年3月1日生まれ、愛知県出身。主な出演作に、「30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい」(テレビ東京系)、「石子と羽男―そんなコトで訴えます?―」(TBS 系)など。4月からは「ペンディングトレイン―8時23分、明日 君と」(TBS系)、「風間公親-教場0-」(フジテレビ系)に出演。連続テレビ小説は今作が初出演。