大河ドラマ「どうする家康」で、関口氏純を演じる渡部篤郎。
第5回の放送では、家康による瀬名たちの奪還作戦が失敗に終わり、窮地に立たされた関口家。彼らの運命は果たして!?
渡部に、関口家の絆や第6回に見どころを聞いた。
――「どうする家康」の出演が決まったときのお気持ちをお聞かせください。
大河ドラマの出演は、「北条時宗」(2001年)以来ですので22年ぶり。オファーをいただけて、本当にありがたいなと思いました。当時と比較しても、大河ドラマの視聴者層や時代観は変化しています。今では、大河ドラマそのものが文化として成り立っているので、もっと幅広い世代の方たちに見てもらいたいですよね。
僕自身は、大河ドラマに出演するというよりも、俳優仲間や後輩が出ているのを外から応援する側と思っていたので、まさか自分が出演するとはという驚きも正直ありました(笑)。
――演じる関口氏純について、どのような印象を持ちましたか。
短いシーンでの出演が多いので、まずは1つ1つのシーンの中でどのように表現するかを丁寧に考えながら演じています。氏純の思いという部分も、台本に書かれていることをしっかりくみ取らなければなりません。ただ、あまり余計なことは考えないようにしているので、氏純として自然体でいられるように心がけています。
氏純のことは「愛娘(瀬名)にはめっぽう弱い」と紹介されていますが、台本には“めっぽう”とは書かれていなかったような……(苦笑)。氏純自身は、瀬名が言っていることは間違っていないと思っていますし、第5回の放送で駿府から岡崎に逃げようと氏純が決断するのも、娘と孫のことを考えてのことでしょうからね。自分たちが生き残るよりも、愛する瀬名と孫を守りたいという一心だったと思います。
――関口家の皆さんとの撮影はいかがですか。
家族のシーンは結構難しいですね。少ないシーンの中で、家族の絆というものを表現しなければならないですから。これまでの経験値として、家族に対する愛情だったり、信頼関係だったり、まずは気持ちを作ってお芝居することが大事だと思っています。
もちろん、シーンごとにこういうふうに表現したいという思いもあります。その中で、家族の絆を作り上げるうえで、僕だけではなく、妻である巴役の真矢ミキさんや、瀬名役の有村架純さんも同じ気持ちで演じていらっしゃるので、関口家のシーンもすばらしいものになっているのではないかと感じています。
――瀬名役の有村架純さんと共演した印象はいかがでしょう。
とてもすばらしい俳優さんです。私たち家族の前では静かな声で話すシーンが多いですけど、瀬名の言葉はとても重みがあります。映像を通してどこまで伝わっているかはわかりませんが、同じ空間でお芝居をしていると、ひと言ひと言の重さは本当にすごいなと。なかなかそう思える俳優さんは少ないので、まだ若いのにすばらしい方だなと感服しております。
――これまでの撮影で思い出深いエピソードはありますか。
なかなか共演者の方とお会いできる日も限られていまして……。真矢さんとは以前共演させていただいたことはありますが、先日初めて大森南朋さんや音尾琢真さんと現場で一緒になっていろいろお話ししましたね。
イッセー尾形さんとは共演シーンはないですけど、大好きな俳優さんなので、撮影現場でちょっと遠めからお芝居を拝見しました。役への挑み方がとてもすばらしいですし、実際にお話しすると本当にやさしくて、俳優としても人としても尊敬しています。
また、今川義元役の野村萬斎さんの演技は圧巻でした。萬斎さんが持っている力といいますか、雰囲気そのものが自然体の義元を生み出していると感じました。僕らが見よう見まねで同じように演じてくださいと言われても、絶対にできないですからね。
そして主演の松本潤さんは、やっぱりスーパースターですから、徳川家康にふさわしい方だなと思いながら拝見しています。持つべき“光”というものを彼は持っていらっしゃるので、この先もどのような家康を演じてくれるか楽しみですね。撮影現場でもリーダーシップを発揮されていて、本当に頼もしいです。
――第6回は関口家にとって大きな山場となります。見どころを教えてください。
内容については詳しく話せませんが、第6回のシーンの撮影前に監督にいろいろ相談させていただきました。それは、こう演じさせてほしいという思いではなく、視聴者の方がどのように感じ取ってくれるかが大切ですので、しっかりストレートに伝えたいという思いがあったからです。
関口家にとって、今回のドラマで最も大事なシーンが描かれますので、ぜひご覧いただけたらと思います。
渡部 篤郎 (わたべ・あつろう)
1968年生まれ、東京出身。1991年に俳優デビュー。NHKでは、大河ドラマ「琉球の風」「毛利元就」「北条時宗」、「外事警察」などに出演。