大河ドラマ「どうする家康」で、服部半蔵を演じる山田孝之。
第5回の放送で、半蔵のもとに家康から重要な忍びの任務が下る。
山田に、半蔵の役柄や松本潤との初共演の感想などを聞いた。


――服部半蔵の人物像をどのように捉えて演じていますか
半蔵は、代々忍びを(なり)(わい)としてきた一族のもとに生まれたものの、物の奪い合いや無駄な争いを好まず、皆で助け合って生きていきたいと思っている人物だと思います。ところが時代は今と違い、身分の高い殿様などからの指示は絶対。忍び働きを命じられれば、従わざるを得ない。それが忍びとしての宿命であることを半蔵自身も理解していると思います。

そんな半蔵を演じるうえで心がけているのは、史実の通りに演じるというよりも、物語の中で半蔵がちゃんと人間として生きられているかということ。そのために、半蔵の生い立ちや思いを、自分なりに読み解いて作り上げていくことがとても重要になっていきます。

半蔵の父は、「忍びはやるな」という遺言を残しました。息子には、同じ苦しみやつらさを味わってほしくないからそう伝えたのだと思いますが、子どものころの半蔵は忍びをどう思っていたのか……。きっと半蔵自身は、忍びとして生きる父の姿を見て、「自分も父のようになりたい」という憧れがあったはずです。

ただ、成長するにつれて、父がいろいろなことに巻き込まれて苦しむ姿を見て、そして最期には「忍びはやるな」と遺言を残したわけですから、半蔵としてはすごく複雑だったと思います。だから彼の中には、本当は忍びをやりたくないし、争いもしたくないという思いが芽生えていったのではないでしょうか。

しかし一方で、幼少期に目に焼きついた父に対する憧れは、半蔵の記憶に残っているわけですから、忍びの任務を依頼されれば、「あのときの父と同じことができる」という喜びもあると思います。

ですので、今回演じるうえでは、半蔵がどんな幼少期を過ごしていたのか、彼の中にはどういう記憶が残っているのか、そういう部分を想像しながら、服部半蔵という人物を作り上げていった感じです。


――半蔵を演じてから、ご自身の中で気づきや発見はありましたか。
忍びの一党・服部党を束ねる半蔵ですが、一党の面目を保つよりも仲間を大切にするという意識が常にあったと思います。仲間たちには妻や子どもがいる者もいますから、任務を実行すれば、彼らがちゃんと生きていけるように金を渡すことも重要な役目。だから、仲間やその家族を守るためにも、半蔵自身も強くなければならないし、務めは絶対に成功させなければなりません。

ですが、忍びとして生きることを望んでいなかった半蔵にとっては、いざ務めを命じられると、「仲間たちの命が危うくなるかもしれない」「彼らの家族を悲しませるかもしれない」という恐怖心もあったはずです。殿様からの命令は実行しなければならないけれど、仲間やその家族を守らなければならないという葛藤は、いつも半蔵の中にあったのではないかと思います。

実際に、服部半蔵がどんな人物だったのかはわかりませんが、こういうところで半蔵の心は揺れていたんだという人間らしい部分を感じられたのは、役作りをするうえでも大きかったです。


――半蔵にとって、服部党の仲間たちはどのような存在だと思いますか。
まさに家族のような存在だと思います。もちろん、党首である半蔵が「やれ」と言えば、手下たちは忠実に実行するという主従関係にあります。ところが、忍びとしての身体能力に関しては、一党の中では半蔵は低いほうです。

父の遺言を守り、忍びの訓練をしてこなかったし、そもそも「自分は忍びではない」とすら思っていましたからね。手裏剣1つまともに投げられない中で、家康から任務を命じられた半蔵は、何も特訓してこなかったことへの後悔を感じながらも、長い間服部党を支えてきた仲間のありがたさに気づいたのではないでしょうか。


――主演の松本潤さんとの共演を楽しみにされていたとお聞きしましたが?
やっと初共演できました。現場で松本さんが監督と話しているところを見ると、さすが「嵐」のライブの演出を務めてきた方だなと思いました。

私たちも「ここはこうですよね」と監督に相談することはありますけど、松本さんの場合は、「どうする家康」全体を見ながら、視聴者の皆さんにどうやって届けるか、何を感じてもらうかということを監督に熱心に相談しているんです。それは、まさに演出家同士の話し合いです。そんな姿を僕自身は「これこそが松本潤さんなんだ!」と興味津々で拝見しています。


――松本さんが演じる家康については、どのような印象を受けましたか
ちょっと違う視点になってしまいますが、物事や自分のことをあれだけ客観視できて、まっすぐ前に進んできた松本さんが、家康として「どうしたらいいんじゃ? どうしたらいいんじゃ?」と右往左往している姿を演じているのは、とても見応えがあると思います。

もちろん、松本さん自身も迷うこともあるでしょうけど、決断力は早いと思うので、今回の家康とは対照的。ある意味、全く真逆のキャラクターを松本さんが演じているところが、いちばん面白いかもしれないです。


――半蔵にとって、家康はどのような存在だと捉えていますか。
半蔵のように身分の低い者からすれば、絶対的な存在です。決してそれにあらがうのではなく、そういうものだと受け入れている半蔵ですが、身分の低い者たちが一生懸命死に物狂いで働いて年貢を納めて、殿様たちは毎日たらふく食べているという気持ちもどこかにあるはずです。

「殿から命じられたことはやらなければならない」という意識はベースにありながらも、家康と半蔵の人間としての関係がどんどん深まっていくかもしれないので、これからどんなエピソードが描かれていくのか、僕自身も楽しみです。


――半蔵の注目ポイントを教えてください。
古沢良太さんの脚本を軸に、半蔵の過去や人物像を作り上げていきましたが、放送をご覧いただくと、半蔵は誰とも目を合わそうとしないことがわかると思います。一瞬パッと目を見ることはあるかもしれませんが、基本的にほとんどのシーンで、人と目を合わせないようにしています。これは、忍びだからということではなく、人のことをあまり信用しない半蔵の警戒心の表れとしてそうしています。

「目は口ほどにものを言う」とも言います。目は相手に情報を与えてしまうので、弱肉強食の戦国時代の中で周囲への警戒心は常にあったでしょうから、半蔵は人の目をほとんど見ません。そんな半蔵が、人の目を見てしまうほど感情が高ぶるシーンが今後出てきたら面白いです。それが家康なのか、本多正信なのか、果たして、それは半蔵にとって信頼を置ける人物なのか。長い期間同じ役を演じるからこそ、そういう半蔵の変化を楽しめたらと思っています。

山田 孝之(やまだ・たかゆき)
1983年生まれ、鹿児島県出身。1999年に俳優デビュー。NHKでは、大河ドラマ「葵 徳川三代」、連続テレビ小説「ちゅらさん」、NHKスペシャル「東京ブラックホール」シリーズなどに出演。