大河ドラマ「どうする家康」で織田信長を演じる岡田准一。
圧倒的存在として家康からも恐れられる信長役への意気込みや、主演・松本潤との撮影エピソードなどを聞きました。


――演じる織田信長について、どのようなイメージを持たれていますか。
織田信長は、今でも多くの方に愛されている人物ですし、カリスマ的なイメージであったり、魔王的なイメージであったり、さまざまな信長像が確立されているので、演じるうえではハードルの高い役だと思います。

今回は、家康が主人公なので、家康にとっての信長がどういう存在になるかが重要です。前半は、家康に向けて自分の存在に対するトラウマを植えつけていく信長ですが、物語が進むにつれて、家康が信長とどう対峙していくのか。

家康だけが信長に発言できるという局面もこれから出てくると思うので、2人の関係の変化も大事なポイントになると感じています。多くの方がイメージする信長像を意識しながらも、人間味がある部分も見せていきたいですし、家康によって強さももろさも見えてくる信長を表現できたらいいなと思っています。


――主演の松本潤さんから、熱烈な出演オファーがあったとお聞きしましたが。
ありがたいことに、松本君から「『どうする家康』に出てほしい」と言われていましたね。今回は、大河ドラマの主演を経験した先輩という立場になりますが、僕が「軍師官兵衛」(2014年)のときは、「秀吉」(1996年)で主演を務めた竹中直人さんが出演されていて。

竹中さんには本当に感謝しかないのですが、当時は「型にはまらず自由にやっていいんだよ」ということを教えていただきましたね。竹中さん自身も自由に演じられていましたから(笑)、「大河だからこうしなければいけない」ということはなく、自由に表現することの大切さを学びました。

今回に関しては、その竹中さんのポジションを多少なりとも僕が果たせるのかなと思いましたし、松本君も「本格的な時代劇は初めてなんです」と言っていたので、硬くなってほしくないなと。僕が参加することで、「自由にやっていいんだよ」と直接伝えられたらと思い、出演を決意しました。


――実際に松本潤さんと共演されての印象はいかがですか。
松本君は、「嵐」のライブで演出を担当するような方なので、今回の作品においても、細かいところまで自分が納得いくまで詰めたいんだろうなという印象を受けましたね。僕とのシーンの練習でも細かい部分の確認や、侍の体の使い方を教えてほしいということで、僕の家にも来ていましたから(笑)。

そういった一面を持ちつつ、撮影現場では常に共演者へ気配りをされていたり、全体をケアしたりする松本君の姿を見ると、さすがだなと思います。毎回、僕が現場に入るたびに「あのシーンどう思いますか?」とか、「何か疑問に感じていることはありませんか?」と聞いてくるんですよ。

きっと、それは僕だけではなくて、共演者の皆さんにインタビューしていると思うんです。僕も同じタイプだからわかるんですが、みんなが納得する形で、よりよい作品にするために力を注ぐ松本君は、主演としても非常に頼りになる方ですね。


――第2回で、少年時代の家康と相撲を取るシーンがありましたが、演じてみていかがでしたか?
相撲のシーンの台本には、「総合格闘技のような激しい攻め合い」と書いてあって、演出側から、総合格闘技の経験もある僕に「相撲の振りを付けてほしい」という依頼がありまして。

もともと「どうする家康」は、時代劇の未来を模索する意味でも新たなチャレンジをして、コアな大河ファンだけではなく、往年の大河のように家族でも楽しめるエンターテインメントを届けたいということを聞いていましたので、新たなチャレンジという意味でも、相撲シーンの振りを付けさせていただきました。でも、まさか大河でも担当するとは思っていませんでしたけどね(笑)。

シーンとしては、家康に対して精神的にも肉体的にもトラウマを植えつける重要な場面。当初は、家康(竹千代)を演じるのが子役の少年なので、信長は僕ではないほうがいいのではという話も出たのですが、圧倒的な差を伝えるうえでも、僕が相撲を取ることになったんです。

本番では、少年の家康を振り回してしまいましたが、家康役の川口(和空)君も楽しそうに演じられていましたよ(笑)。映像では、信長が家康をとことん追いつめている印象を受けたかもしれませんが、撮影の最後には「僕もアクションができる俳優になりたいんです」と言ってくれたので、嫌にならなくてよかったなとホッとしました。

彼はお芝居のセンスもすばらしくて、動きだけではなく、家康の感情をしっかり表現していたので、僕も演じていて楽しかったですし、このシーンを通して人間味のある信長を伝えることができたと思います。

第4回では、松本くん演じる家康と相撲を取るシーンがありますからね。信長と再会した家康が、果たしてかつてのトラウマを克服できるのかという大事なポイントになりますので、ぜひご覧いただきたいです。


――信長を演じるにあたり、オリジナルの弓を作られたとお聞きしたのですが?
これまでも時代劇の役柄を演じるときに、伝統文化や古典芸能を継承する現代作家の方たちを応援したいという思いを込めて、役柄にあった持ち道具を作っていただくことがあって。ちょうど、岡山県で弓を作っている作家の方と出会う機会があり、「今度信長を演じるので、弓を作ってほしい」とお願いしたんです。

お話しもさせていただいて、今回の信長は華美な感じではないので、実際に使えることと併せて、渋くて通好みの弓をオーダーしました。本来は撮影用ではないので、撮影ではいろいろ制限が出て苦労する部分もありますが、信長のイメージにぴったり合った弓が完成したと思っています。


――衣装も信長の存在感が伝わるものになっていると感じましたが、どのような印象を受けましたか。
人物デザイン監修の方たちと一緒に、信長の衣装をどうするか決めていく作業は楽しかったですね。「どうする家康」で描かれる信長像に合った衣装がベースにありつつ、この時代に使われていない生地なども取り入れながら、オリジナルの衣装を作りました。

もちろん、史実通りにすべきだという声もあるかもしれませんが、幅広い世代に見ていただくエンタメ作品を目指すうえでも、素材や色味を優先した形にしています。今回の信長の衣装に関しては、ぜひマントに注目していただきたいですね。


――最後に、「どうする家康」の見どころを教えてください。
それぞれの成熟度合いに尽きると思います。物語前半は「家康、どうする?」ということをたくさん問われて、現代的な家康に見えるかもしれませんが、どんどん変化していくはずです。

僕は毎日撮影に来るわけではないので、たまに撮影に入ると、現場の成熟度合いとともに、役者さんの成熟度合いをすごく感じるんですよね。撮影が始まって5か月ほど経って、最初の頃と比較しても、皆さんが地に足を着けて撮影に臨んでいるなと感じますし、それは本当に松本君の力だと思います。

家康の成熟度合いも最初から見続けていけばいくほど、どんどん味がしみ込んでいきますので、毎週欠かさず見てほしいですね。そして僕らは、その期待に応えられるようにとにかく頑張るしかないので、多くの方に愛される作品、人物を目指していきたいと思います。

岡田 准一(おかだ・じゅんいち)
1980年生まれ、大阪府出身。1995年V6のメンバーとしてCDデビュー。俳優としても映画やドラマで活躍し、2014年の大河ドラマ「軍師官兵衛」では主人公・黒田官兵衛を好演。NHKでは「大化改新」などに出演。