テレビ70年記念ドラマ「大河ドラマが生まれた日」
2月4日(土) 総合 午後7時30分~8時45分
[特別版] 2月20日(月)BSP/BS4K 午後9時~10時29分
テレビ放送開始から70年を迎える2023年2月。テレビ初の大型時代劇に挑戦したテレビマンの情熱と奮闘を描いた「大河ドラマが生まれた日」が放送予定。ドラマのアシスタントディレクター山岡進平を生田斗真さん、山岡の上司のプロデューサー楠田欽治を阿部サダヲさんが演じる。2人に今作にかける思いと共演した中井貴一さん、中村七之助さんとのエピソードを聞いた。
――このドラマへの出演のお話を聞いたときのお気持ちをお聞かせください。
生田 個人的に「大河ドラマ」がどのように生まれたのか興味があったので、とてもワクワクしました。脚本の金子茂樹さんとは何度か作品を共にしていますが、今回も金子さんらしいジョークがちりばめられ、その中に「嘘みたいな本当の話」も詰め込まれていて、興味深く台本を読みました。
阿部 ドラマがどうやって立ち上がるのか、それを担うプロデューサーという役職に興味を持っていたので、今回演じることができてうれしいです。僕は金子さんの作品に出演するのは初めて。笑いもあれば、心に刺さるセリフもたくさんあって、演じていて楽しかったですね。

――今回、共演された感想はいかがでしょうか。
生田 阿部サダヲさんは、僕にとって憧れの人。コミカルからシリアスな役まで、なんでも演じられるオールラウンダーな阿部さんとずっとご一緒したいと思っていました。今回共演できて本当にうれしくて。毎日、楽しかったですね。
また、阿部さんはセリフ覚えが異常に早いんですよ! これは業界内では有名な話なんですが、その噂は本当でした(笑)。「写真を撮るように、台本を覚えている」とおっしゃられていて、すごいなと思いました。
阿部 ありがとうございます(笑)。僕は、斗真君の出演舞台を観たり、楽屋などでもよく会ったりしていたので、近い存在に感じていました。でもこれまでは、なかなか共演の機会がなくて。だから、今回の共演は本当にうれしいです。
斗真君は、笑いもできて、とても勘が良く、芝居の間も僕はとても好きなんです。アシスタントディレクターの大江育間を演じる、矢本(悠馬)を含めた3人のシーンが多かったのですが、いつもワイワイと楽しかったです。
生田 なかでも、矢本君演じる大江が、現場から逃げ出そうとするのを引き留める場面があるのですが、このシーンは強く印象に残っていますね。
山岡が大江に、「誰かがいなくなっても、必ず誰かが代わりに入るから、テレビの放送は続く。だけど俺は、お前と一緒に作りたいんだ」といったような言葉をかけるのですが、これには金子さん自身の思いもおそらく入っていたんだろうと思います。思い出深いシーンとなりました。
――今回、大河ドラマ第1作『花の生涯』に出演された佐田啓二さんを中村七之助さんが演じます。そして佐田啓二さんの息子である中井貴一さんが、NHK芸能局長の成島役として出演しています。

生田 中井貴一さんとは、今回初めてご一緒しましたが、華や色気があって、圧倒されましたね。一緒にお芝居していく中でも、少し緊張しました。今回の共演は、自分の宝となりました。
阿部 僕も、中井さんとのシーンは印象に残っています。撮影は1日だけだったのですが、その日は中井さんのお父様、佐田啓二さんの御命日。この日に、お芝居をご一緒することができて、本当に感動しました。そして、「佐田さんって本当にこういう人だったのでは」と感じさせる、中村七之助さんのお芝居が本当にすてきでした。

生田 ふだんの七之助さんとはまた違った雰囲気でしたね。実は今回、中井さんから、佐田啓二さんがつけていた腕時計を託されたそうです。七之助さんは、その時計をずっとつけたまま、撮影に臨まれていました。演じられる上で、大きな力となったのではないかと思います。
阿部 七之助さんは、途中から歌舞伎の公演が入りましたが、それでもセリフは完璧に覚えていらして。斗真君から「セリフ覚えがいい」という話をいただきましたが、まだまだ上には上がいるというのを痛感しました(笑)。
――大河ドラマの制作奮闘記を演じられ、ドラマに対する思いなどに変化はありましたか。
生田 はじめの一歩を踏み出すことって、本当に大変だったと思います。この時代は映画の力が圧倒的に強く、映画スターがテレビドラマに出ることができないという五社協定もあった。その協定を何とか切り崩して、テレビの価値を上げてきた先人たちがいたからこそ、今の僕らの仕事が成り立っていることを改めて感じました。
阿部 斗真君のおっしゃる通り、協定が撤廃されたことで、今いろいろなジャンルの人と、ドラマで共演することができています。歌手やお笑いの方など、だれでもドラマに出演することができるのは、とてもすてきなことなんだと実感しました。
生田 今作のキャスティングは、当時の情勢とは真逆ですよね。演劇人、歌舞伎役者もいれば、伊東四朗さんといった喜劇役者もいらっしゃる。幸いなことに、僕はすべての役者さんとお会いすることができました。僕だけずっとリングにいて、その中に次々と共演者の方が入ってくる異種格闘技戦のような感じもありました(笑)。本当に楽しくて、あっという間の撮影でした。
阿部 伊東四朗さんとの共演、うらやましい……! アドリブもけっこうあったでしょう?
生田 そうなんです。セリフの間なども、伊東さんならでは。すごいなあ…と興奮しました。
――当時の撮影方法などで印象に残ったものはありましたか。
生田 現在は本番スタート5秒前からカウントすることが多いんですが、当時は30秒前から数えていたんです。収録機材が安定するのに時間がかかるからだそうなんですが、役者としては、すごくドキドキする時間ですよね。これにはびっくりしました。
阿部 僕は、「桜田門外の変」の撮影時、雪景色を作るために、白い布をセットにかぶせたのが印象的でした。スタッフが、布を持って走ったのが、何かの競技っぽさもあって、楽しかったですね。布を雪に見たてるって、おもしろい発想ですよね。
生田 実は「花の生涯」の映像は、一部しか残っていないんです。「桜田門外の変」のシーンは幸いにも現存していて拝見しましたが、白い布がちゃんと雪景色に見えるんですよ。役者やスタッフの思いがダイレクトに伝わってくる映像でした。その熱量に負けないよう、僕たちも熱く演じました。
阿部 また、「大河ドラマが生まれた日」放送の翌日に、「花の生涯」の第1話と、クライマックスの「桜田門外の変」の一部を最新のAI技術によってカラー化した映像が放送されるんですよ!
2月5日(日)総合/BS4K 午後4時30分~5時29分
生田 えっ、すごいですね!
阿部 カラー化された映像を拝見しましたが、迫力ありましたね。こちらもぜひ多くの方に見ていただきたいです。
▼「カラーでよみがえる!大河ドラマ第1作『花の生涯』」特集記事はこちら
NHKの「幕末時代劇 AI」がすごい! 大河ドラマ第1作「花の生涯」はこうしてカラー化された!舞台裏を徹底取材! | ステラnet (steranet.jp)
――最後に、ドラマを楽しみにされている方へメッセージをお願いします!
阿部 「小さい子どもからおじいちゃんおばあちゃんまで見てもらえるドラマを作りたいんだ」という楠田のセリフの通り、みんなの熱い気持ちが伝わるような作品です。幅広い年齢の方に見ていただけるドラマになっていると思います。
生田 テレビが変わろうとしている、変わるべきタイミングかもしれないこの時代に、テレビの価値を高めるために奮闘した人たちを描いたドラマに関われることに、大きな意義を感じています。見てくださる方が、今作をどのように受け取ってくださるのか、楽しみでもあります。ぜひ多くの方に見ていただけたらうれしいです。

阿部 楠田には、「身近な人々を喜ばせたい」という思いを強く秘めています。実際、僕も家族が喜んでくれたらと思い、演じることもあります。そんな楠田の思いが、「花の生涯」のある要素を決定づけることに。そこにもぜひ注目してもらいたいですね。
今回、プロデューサーを疑似体験しましたが、本当に大変な役職だと痛感しました。物事を全部決めて、皆の動きもすべて把握しないといけないですし……。尊敬するのと同時に、何でも知っている怖さも抱くようになりました(笑)。
今作は、はなやかなドラマの裏で、スタッフがこんなことをやっていたという、ふだん見られない世界を垣間見ることができます。それだけでも、見ていただく価値があると思います!
生田斗真(いくた・とうま)
1984年10月7日生まれ、北海道出身。NHKでの主な出演作に、大河ドラマ「軍師官兵衛」「いだてん〜東京オリムピック噺〜」「鎌倉殿の13人」など。主演ドラマ「幸運なひと」が、2023年春にBSプレミアム/BS4Kで放送予定。
阿部サダヲ(あべ・さだを)
1970年4月23日生まれ、千葉県出身。NHKでの主な出演作に、大河ドラマ「平清盛」「おんな城主 直虎」「いだてん〜東京オリムピック噺〜」、土曜ドラマ「空白を満たしなさい」など。主演映画『シャイロックの子供たち』が2月17日金曜に公開予定。