初回視聴率が関東地区で15.4%、関西地区で16.2%となかなかのスタートを切った「どうする家康」。

脚本が、ドラマ「相棒」シリーズや「リーガル・ハイ」、「コンフィデンスマンJP」シリーズなどで知られる人気脚本家の古沢良太。
主演は、国民的グループ「嵐」のメンバーとして活躍してきた松本潤。
共演者も大河ドラマにふさわしく、有村架純、岡田准一、北川景子、阿部寛……などなど豪華メンバーが集まったのだから注目度は高く、面白くないはずはない。

ただ、私はちょっと違うポイントで見ている。
今作の制作統括は、大河ドラマ「平清盛」(2012年)でも制作統括を務めた磯智明チーフ・プロデューサー(CP)という点だ。

今でこそ、大河ドラマフリークの間で“名作”の呼び声も高い「平清盛」だが、放送当時は、「映像が暗い」「画面が見にくい」など不当ともいえる批判が先行し、大河ドラマ史上初めて各回視聴率が2桁を切ってしまった作品なのだ。
磯CPにとって、無念だったに違いない。この作品を愛していた私としても、悔しくて悔しくて!

あれから11年、磯CPが満を持して制作したのが「どうする家康」。
今作にかける思いは、いかばかりか……。おかえりなさい、磯CP! 個人的に、今作を磯CPの“リベンジ作”と位置付けている私としては、ひときわ期待しているわけなのです。

さて本編。
子役を使わず、桶狭間の戦いから物語を始めたところはさすが古沢さん。この戦いを境に、松平元康(のちの徳川家康)が戦国の濁流に飲み込まれていくわけで、運命の永禄3(1560)年ともいえる。

元康は数え19歳。若々しく、まだ成熟しきっていない若者像を視聴者にアピールするには最高の舞台だ。

最近の大河ドラマでは最新の学説を取り入れることも珍しくない。今作も「家康の人質生活は悲惨なものではなかった」というこれまでにない視点で描いている。

今川義元も、家康が尊敬する主君として描かれていましたね。野村萬斎が演じることで、まさに“海道一の弓取り”の威厳がありました。初回で討ち死にしてしまったが、彼ほどのビッグネームが初回限りというのももったいない。回想でまた出てくるのかな?

ちなみに、萬斎ファンにはうれしい「今川義元の舞」完全版が公開中。

それにしても、次郎三郎(家康)が、瀬名(有村架純)相手に、ままごとに人形遊びとは! かっぷくよく威厳のある家康をイメージしていた方には衝撃だったろう。
家康が今川家の人質になったのが8歳のころなので、瀬名と一緒に遊んでいたのは小学校高学年の年代と考えれば、確かにおかしくはない。まあ、大河ドラマでは実年齢に目くじらを立てるより、楽しんだほうがいい。

大河ドラマ「真田丸」(2016年)の内野聖陽が演じた家康も、とってもキュートだったが、今作の家康は違った意味でスイート&キュート。こんな子供遊びをする“松潤”が見られるなんて! 一部のファン垂涎ではないだろうか。

初回から過去の思い出がフラッシュ的に盛り込まれていたので、幼い頃のエピソードも今後、だんだん明かされていくのだろう。

映像面では、無理にロケをするのではなく、巨大LEDパネルを背景に、CGで合成する最新技術が多用されている。これはハリウッドなどでも使われている映像技術だが、これが今後どのように効果を発揮するのか、そこにも注目している。

先にも書いたように、これから家康の人生は戦いの連続で、近しい人もどんどん死んでいく。去年の「鎌倉殿の13人」も辛い回が続いたが、今作もそこは負けず劣らず。その辺りは、古沢さんの脚本が小気味よく展開していて、ところどころにコメディー要素を挟み込んでいるので心配は無用か。

大森南朋演じる酒井忠次の海老すくいの3連発とか、ラストシーンで家臣たちに「どうする!」を連呼されるシーンなどはこれまでの大河ドラマにはなかった演出だった。磯CPの意気込みが、そんなところからも伝わってくる。

来週第2回は、いよいよ信長が本格的に登場する。演じる岡田准一には黒田官兵衛(大河ドラマ「軍師官兵衛」2014年)のイメージが強いので、それをどう塗り替えていくのか楽しみだ。

そういえば、同じ古沢さん脚本の映画「レジェンド&バタフライ」も1月27日から公開される。木村拓哉“信長”と岡田准一“信長”を見比べてみるのも一興かもしれない。綾瀬はるか“濃姫”に対して、「どうする家康」の濃姫は誰なのかしらん。


(ついでに……)
本編終了後の「どうする家康」紀行のナレーションは通常、NHKのアナウンサーが担当するのだけど、今回は松重豊さんでしたね。
ドラマにも石川数正役で出演している松重さん。BSプレミアム「英雄たちの選択」のナレーションも松重さんが担当しているので、一瞬そちらの番組を見ているのかと思ってしまった。
ずっと彼でいくのだろうか。それとも出演者の輪番制? それはそれで楽しみだ。