大河ドラマ「どうする家康」
第1回「桶狭間でどうする」(初回15分拡大)
1/8(日) 総合 午後8:00~9:00
BSプレミアム・BS4K 午後6:00~7:00
【作】古沢良太 【音楽】稲本響
2023年1月8日からスタートする大河ドラマ「どうする家康」で、今川義元を演じる野村萬斎。人質として預かった家康に目をかけ、幅広い教養を身につけさせていく義元。
家康にとっても父のように尊敬する存在であるが、野村萬斎に義元役への思いやドラマの見どころを聞いた。
――「どうする家康」のオファーが来たときのお気持ちをお聞かせください。
前回出演した大河ドラマ「花の乱」から29年がたったんだということに、まずは驚きました。その間もオファーをいただいていたんですけど、なかなかタイミングが合わず……。今回は、脚本を手がける古沢良太さんからご指名があったということもありまして、お受けさせていただきました。
「どうする家康」における今川義元の位置づけとしては、家康に対して「王道と覇道」を説くという重要な役割を担っています。戦国乱世、義元は王道としての考えを家康に伝えていきましたが、のちに家康が天下を統一し、平安の世になっていく中での精神的な礎が、そのときの義元の教えにあったという。その意味でも今回は、家康にとって義元は精神的支柱でなければならないと思いましたね。
――今作の義元の人物像については、どのような印象を受けましたか。
さまざまな作品で登場してきた今川義元は、公家的な要素が強い描かれ方もあれば、「海道一の弓取り」と呼ばれた大物として描かれることもありました。現在は、後者のほうが主流になりつつあるのでしょうか。
歴史的には、桶狭間の戦いで信長に敗れてしまう義元ですが、「どうする家康」では、特に家康の青少年期を形成するにあたって大きな影響力を与える存在として描かれています。実際は、人質と太守様という間柄ではあるけれど、ある種の父子のような関係にも見える。実の子・氏真との対比という部分も丁寧に表現されていますし、家康への期待や、彼の才能を見抜く見識を備えた義元の一面に注目してほしいなと思います。
――義元を演じるうえで、意識されていることはありますか。
演出のポイントとしては、義元自身が禅の影響を受けているということ。ですから、今回の義元の衣装も華やかなものではなく、藍染めのシックな感じになっています。そこには、義元が本質的なものの捉え方をしているという意味も込められていますし、戦うだけではダメだという1つの理念、洗練された彼の考えが表現されています。群雄割拠の戦国乱世において、多くの大名たちの中でも、とりわけ都会的で文化的要素を持ちえた人物だと思いながら演じました。
――これまで演じてきた中で、印象に残っているシーンは?
第1回は印象的なシーンが多かったです。出陣するときに、舞を舞うシーンというのもありましたしね。ここは、私のために古沢さんが書いてくれたシーンだと思うのですが、謡や舞の構成などは私が決めて、ちゃんと思い通りに表現することができたと思っています。
そして、やはり松本潤くんとのシーンですかね。若き元康を演じなければいけないわけですから、しっかりと年の心を持ってお芝居をしていた印象です。そんな松本くんの気持ちが入った演技もそうですし、義元として元康と心の交流ができたことがとてもよかったなと思います。
一方で、実の息子である氏真に対しては厳しい義元ですが、元康の才能を認めつつも氏真のことを思う複雑な一面も垣間見えます。人を動かし束ねていくために必要な器とはどんなものかということを義元自身もわかっているがゆえに、氏真に厳しくなるわけですし、それができない者を上に置いてもしかたがないという思いがある。
その葛藤を抱える義元ですが、私自身はそれを感じさせないように演じました。氏真役の溝端(淳平)くんも鬼気迫る演技を見せてくれていたので、ぜひご覧いただきたいですね。
――「どうする家康」の作品としての魅力を教えてください。
古沢さんならではの群像劇が、チーム家康を中心に強固に描かれています。戦国という厳しい時代ではあるけれど、そこを古沢さんは半ばシリアスに、半ばコミカルに表現されています。その中で義元は、王道を説く理想的な武人であり、文人でもある存在として、徳川家康の人生において大きな影響を与えています。
そんな義元は、信長によって夢半ばにしてつい果ててしまう運命にありますが、彼の生きざまや考えは、現代にも通ずる1つのリーダー像かもしれないので、その片りんを今作で伝えられたらと思います。
野村 萬斎(のむら・まんさい)
1966年生まれ、東京出身。狂言師。1970年、狂言「靭猿」で初舞台。1985年、映画『乱』で映像デビュー。1994年に野村萬斎を襲名。NHKでは、大河ドラマ「花の乱」、連続テレビ小説「あぐり」、「蒼天の夢」、「鞍馬天狗」などに出演。