大河ドラマ「どうする家康」
第1回「桶狭間でどうする」(初回15分拡大)
1/8(日) 総合 午後8:00~9:00
BSプレミアム・BS4K 午後6:00~7:00
【作】古沢良太 【音楽】稲本響


2023年1月8日に、いよいよスタートする大河ドラマ「どうする家康」。
三河の国に生まれたひとりの弱き少年が、運命に翻弄されながらも、戦国乱世を終わらせた奇跡と希望の物語。
主人公・徳川家康を演じる松本潤に、本作への意気込みとともに、家康への思いを聞いた。


――「どうする家康」のオファーが来たときのお気持ちをお聞かせください。

本当にびっくりしました。まさか自分に大河ドラマの主演のお話が来るなんて想像もしていなかったので。その時点で、徳川家康を主人公にした大河ドラマをやりたいということを聞き、「私が家康を?」と考えたら、正直想像ができませんでした。

併せて、最初にオファーをいただいたときは、嵐の活動休止前だったんです。活動休止まで3か月くらいいろいろなことをやらなければならないタイミングでしたから、僕自身も「大河ドラマの主演をやります」と判断するには難しい状況でした。ですから、今回は縁がなかったのかもしれないと思い、一度お断りさせていただいたんです。

それでも、年明けまで返事を待ちますと言ってくださったので、嵐としての活動を休止してから改めて考える時間をいただいて。そのとき、ずっと乗り続けてきた嵐という船を一度降りることになり、何か新しいことにチャレンジできたらいいなという気持ちになったんですよね。

大河ドラマという約1年半の長い期間をかけて作り上げる作品にはなかなか巡り合えるものではないし、一人の人物をとことん掘り下げて演じることも最初で最後かもしれないと思い、オファーをお受けすることに決めました。


――過去に大河ドラマの主演を務めた方から、何かお話やアドバイスをいただいたりはしましたか。

ちょうど主演のオファーをいただいた2020年の年末頃に、岡田准一君と小栗旬君と食事をする機会があって。岡田君は一度「軍師官兵衛」で主演をやられていますし、小栗君も2022年の「鎌倉殿の13人」で主演が決まっていたので、「実は今、大河ドラマの主演のオファーをいただいているんです」という話をしたんです。岡田君は官兵衛のときの印象も含めていろいろ話をしてくれて、2人とも「やったほうがいいと思うよ」と背中を押してくれました。

また、個人的にも、昔からずっと一緒にやってきた小栗旬という俳優の次に大河ドラマの主演をやるのも面白いなと。ですので、このときにいろいろな話ができたことが、自分の中で「大河の主演をやる」と腹を決める1つの要因になったと思います。


――撮影に入ってみて、現場の雰囲気はいかがですか。

とても楽しいですね。僕自身、そもそも作品づくりというのは、楽しんでやるものだと捉えていて。主演としての役割はもちろんありますが、自分一人が何かをやったからといって変わるわけではないですし、キャスト・スタッフ一人一人がいいモチベーションで、いいパフォーマンスをすることで、すばらしい作品ができると思っています。みんなで、共同作業で作り上げていくからには、楽しいほうがいいですからね。

ただ、評価は作品を見てくれる人がすることなので、僕らは責任を持って与えられた仕事を全うすることが大前提。その中で、みんなで同じ方向を目指すから作品は生まれるし、「この人がいてくれたから、これができたよね」という相乗効果がたくさんあるのも作品づくりの醍醐味だと思います。僕自身は、どうやって化学反応を起こせば作品として面白くなるのかを、いつも考えながら現場に立つことを心がけています。

また、今回の主人公・徳川家康という人物を描くにあたって、圧倒的なカリスマ性や策略的な部分を表現するよりも、家康を支えるチーム力や、彼を押し上げていく力というのがとても重要だなと思っています。物語も、家康が先陣を切って仲間を引っ張っていくのではなく、周りの人々をいかにうまく巻き込んでいくのか、家康とその周囲の人々にもスポットを当てながら物語は進んでいくので、チームプレーを大事にしたいなと。

その最たるものが、徳川家臣団だと思いますし、彼らのチーム力にはぜひ注目してほしいですね。もちろん、徳川家臣団に限らず、織田勢、今川勢、武田勢といった面々を、どのようなバランスで置くと作品として面白くなるのかなということも考えるようにしています。現場では、なかなか一歩引いた形で客観的に見ることはできないので、自分の主観を信じて日々撮影に臨んでいます。


――これまで演じてきて感じた、家康の魅力はどんなところでしょうか。

脚本の古沢(良太)さんが“か弱きプリンス”と表現していましたけど、家康は力のない若い頃から、生き残るためにはどうすればいいのかということを常に考えていたと思います。

時代的にも立場的にも、駿河と尾張という大国に挟まれた三河に生まれた人間であり、人質生活も送ってきたわけですから、どちらの勢力につくかという選択を迫られることが多かったはずです。その中で、どうすれば松平、徳川の名を残していけるのか。それが家康にとって生きる目的になっていたでしょうから、本当に間違えが許されない大変な時代ですよね。

もともと僕の中にあった徳川家康像は、信長、秀吉、家康の三英傑において、“鳴かぬなら 鳴くまで待とう ホトトギス”と詠った話や、征夷大将軍にのぼりつめたという、歴史の教科書で学んだイメージが強いというか。もっと言うと、“たぬき親父”と呼ばれるように、虎視眈々たんたんと静かに天下を狙いながら棚ぼたで取れたといわれる側面が思い浮かびます。

ただ、今回の物語はそういった部分だけではなく、圧倒的に選択を間違えなかった、賭けに負けなかった人物という部分にも焦点を当てています。それこそ、家康がなぜ最後まで生き残ることができたのかという――。

家康自身は選択を迫られたときに、「今回はこっちを選ぶ」と100%納得して決断することはできなかったでしょうし、家臣団など仲間の存在が決断を後押ししてくれたことも多かったと思います。

一方で、信長などからすさまじい圧力をかけられて、決断せざるを得ない状況に追い込まれるケースもあったでしょうからね。「どうする家康」では、とにかく何度も何度も選択を迫られる瞬間が出てくるので、その決断に葛藤する家康を魅力的に演じていきたいと思っています。

実は、これまで家康を演じてきて、すごく不思議なことが起きていて。台本を読んで、リハーサルをやって、撮影現場に入って、テストをやってというところまで、「このシーンはこういうふうに演じよう」と考えているんですけど、いざ本番に入ると、自分とはかけ離れた何かが動いているような感覚に陥ることがあるんです。

信じられないような話ですけど、僕の体を使って家康公が何かをやらせているのかもと思ってしまう瞬間があるといいますか。芝居をしていても、本番ではそれまで感じていた感情とはまったく違うことが急に降ってくるというのが何度も起きていて、それはすごく不思議ですね。

もちろん、共演者の方たちのお芝居であったり、現場のスタッフの方たちの空気感であったりも影響している部分があると思いますが、今まで味わったことのない感覚でお芝居できていることが、とても新鮮で面白いですね。
 

――家康ゆかりの地も訪れたと聞いていますが、地元の期待を肌で感じていかがですか。

撮影が始まる前に、久能山東照宮(静岡市)にある家康公のお墓をお参りさせていただきましたが、戦のない世、江戸時代を築いた偉大な人物ですので、改めてしっかりと丁寧に演じなければいけないという思いになりました。やはり家康公に対するリスペクトは、常に持って撮影に入りたいと思っていたので、そのほかにもさまざまな家康公ゆかりの地に足を運びました。

総じて感じたのは、どこへ行っても家康公はみんなから愛され、崇められていることです。まさに、地元のスーパースターなんだなと感じましたね。そんな地元のみなさんの家康公への思いを聞いたからこそ大切に演じたいと思いましたし、多くの方から「家康公をやられるんですね。頑張ってください」と声をかけていただいたので、喜んでもらえる作品になるように精いっぱい演じ切りたいと思います。

そして、「どうする家康」をきっかけに、ゆかりの地だけはなくて、今そこで暮らす人たちや地域全体にもスポットが当たるきっかけに、微力ながらなれたらいいなと思っています。

松本 潤(まつもと・じゅん)
1983年8月30日生まれ、東京出身。人気アイドルグループ・嵐のメンバーとして活躍。ドラマや映画など数多くの作品に出演し、俳優としても注目を集める。NHKでは、「はじまりの歌」、「永遠のニシパ~北海道と名付けた男 松浦武四郎~」に出演。大河ドラマは初出演。
(※「永遠のニシパ」の“シ”は小さい“シ”)