クローズアップ現代「“母親の後悔”反響の向こうに何が」
12月13日(火)総合 午後7:30~7:57
再放送 12月14日(水)BS1 午後5:30~5:57
※12月20日(火)まで、NHKプラスで配信予定
スタジオゲスト/山崎ナオコーラ VTR出演/湊かなえ
「時計の針を戻せるとしたら、あなたは母親になることを選びますか?」
そんなドキッとする問いを探った本『母親になって後悔してる』が大きな反響を呼んでいる。イスラエルの学者が母親たちをインタビューしたもので、「子どもは愛しているが、母になって後悔してる」という複雑な思いに共感が集まっているという。NHKの取材班がWEB記事(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220523/k10013634851000.html)などで伝えると、全国から300以上の投稿が集まった。「我が子を産んだ後悔は決してない」という思いと共に、母親たちが心に内に秘めてきたものとは——。番組では、学術書が投げかけた問いと反響に迫る。

今回、番組の企画を担当した依田真由美ディレクター(NHK社会番組部)、番組デスクの中島紀行副部長(NHK社会部)に、取材を進められての思いなどを聞いた。
依田ディレクター
学生のとき、母や周囲の母親たちが、自分を犠牲にしながら生きているように感じていたことがありました。ですので、『母親になって後悔してる』の存在を知り、こうした思いを声に出してもいいというのが、新鮮な驚きとしてあったんです。そこで、この本に関する記事をweb特集などで発信したところ、母親の方から、共感を得る声が多数集まりました。「これまで言っちゃいけないことだと思っていた」「『母親なんだから』と呪文のように言われ続けてきて苦しい」といったリアルな声が届きました。
そして番組では、インターネット調査で6,000人を超える母親にアンケートを実施。その中で、母親たちのある心の内が見えてきたという——。

依田ディレクター
驚いたのは、およそ3人に1人が、「一度でも母親にならなければよかったと思ったことがある」と回答したこと。理由として多く挙げられていたのが、「自分は良い母親になれないと思う」といった、自分自身に責任を感じている意見でした。子どもへの愛情がないということではなく、母親の役割に対して、重荷を感じている方が多いように思います。
また、来年2月に出産を控えている依田ディレクター。ずっと「自分は母になったら後悔するのではないか」と感じ、10代の日記には「母親になりたくない」とつづっていたという。番組内で、現状を変えようとする母親たちのもとを訪ね、「“後悔”の向こう」を探す旅に出る。

依田ディレクター
年齢を重ねるごとに、子どもに会いたい気持ちがつのる一方で、母親になることへの不安もありました。だからこそ、後悔している人の背景をしっかり見つめたいと思い、当事者の方に直接取材をしました。もちろん、お話を聞くことへの不安もありましたが、皆さんの話を聞いていくうちに、気持ちが少しずつ楽になったんです。「後悔してもいいんじゃないか」と思えるようになったといいますか。自分を責めないヒントを得ることができたように思います。そういったことを、番組を通じてお届けできたらと思います。
また、今回の取材チームで、唯一の男性メンバーとなるのが、中島副部長。どのような思いを胸に、今回携わっていったのか——。
中島副部長
夫や家族も一緒に考えていかなければいけない問題だということも、番組を通じてお伝えしたいことです。ここまで多くの母親が、自分の思いにふたをしていることに、社会としてどこか気づいてはいたけど、それを突き詰めたことはなかったように思います。この問題は、母親だけの問題ではなく、社会全体で解決しないといけないこと。社会の制度や仕組みはまだまだ追いついていないですが、まずは、母親たちが生きづらさを声に出していける社会へのひとつのきっかけになれたらと思います。
スタジオゲストには、エッセイ『母ではなくて、親になる』を執筆された、山崎ナオコーラさんが登場。さらに、小説家の湊かなえさんがVTRで出演。現在公開中の映画『母性』が話題を呼んでいるが、湊さんは母性についてある違和感を持っており、その思いを原作に込めたという。

放送を通して、『母親になって後悔してる』が投げかけた問いについて、そして母親たちの本当の思いについて、考えたい——。
【番組 HP】https://www.nhk.jp/p/gendai/ts/R7Y6NGLJ6G/
【番組 Twitter】@nhk_kurogen