Eテレ 11月26日(土)午後9:30~9:59
再放送 Eテレ 12月2日(金) 深夜0:30~0:59
○ナレーター:水瀬いのり
本放送から1週間見逃し配信しています。見逃し配信はこちらから↓
https://www.nhk.jp/p/naresome/ts/KX5ZVJ12XX/plus/?cid=cchk-mgqc-20220910-steranet-01
11月26日放送の「自分に正直に生きる“プレゼンの神”&生き方を全肯定する造形作家」に、ゲストとして出演したシャラ ラジマ。彼女は「褐色の肌に金髪、青い目」という、容姿からは人種が容易に判断できないビジュアルをまとい、“人種のボーダレス”を表現しながらモデル活動を行っている。今回で出演が2回目となった彼女に、番組の魅力について聞いた。

——「なれそめ」は、カップルの“なれそめ”から社会の多様性をひも解く番組ですが、シャラさんご自身も多様性についてメディア等で発信されていますね。
私はバングラデシュルーツの移民2世として生まれて、東京で育ちました。褐色の肌はそのままに、髪を金髪にしたり、青いカラーコンタクトをつけたりして、“人種のボーダレス”を体現しながらモデル活動をしたり、文章を書いたりしています。その根底にあるのは、“多様性を自ら可視化する”ブランディング(ブランドを形作るための活動、戦略)。自分の生い立ち、つまり日本育ちだけどバングラデシュ人というアイデンティティーの中で、外国人なのか日本人なのか、もしくは違うのか、世の中は区分したがるんですよね。だから「いっそ何人かわからなくなってしまえば、いろんな要素が混じった人間に見えるんじゃないか」と思って、こういう容姿で活動しているんです。
だから、多様性を語る「なれそめ」に初めて出演させていただいたとき、「まさに私のことだ!」と思うぐらい、テーマが重なったんですね。私はふだんは話をするのがあまり上手ではないのですが、この番組ではうまく話せているかもしれない(笑)。それはやっぱり内容が自分に近いものからでしょうね。

——出演されるにあたって、どんなことを心がけたり、意識されたりしていますか?
いちばん大切にしているのは、自分自身の言葉を使う、本当のことを言う、ということです。私に対するビジュアル的なイメージ、外から見たときには、それこそ人間味がない、リアルではないように感じられると思うんですよね。それは自分であえて意図的に近未来的なイメージに“寄せて”いるのですが、だからこそ、このビジュアルで自分にとって本当にリアルな言葉を使うのは、そのコントラストで伝えたいことがあるからなんです。
——人は見た目からインスピレーションを得てしまいがちですが、それとは違う自分が在ることを伝えるのは、簡単そうで実は難しいように思います。
そうですね。だから私は、そのギャップを、見た目と話の内容でつけたいと思っているんです。「親しみやすいタイプだよね」と言われることも結構多いため、見た目も親しみやすさに寄せたほうがブランディングとしてはいいのかもしれません。でも、アルゴリズム(問題を解くための処理方法)に導かれるような答えは、私はあまり好きじゃない。「人は相反するものが同居している」という考えが、根元にあるんです。人間味のない人形のように見える人間が、実はいちばんリアルなことを語っているのがこの世界の現実、みたいなことをいつも意識してます。


——番組MCを務めている田村淳さんに対しては、どのような印象をお持ちですか?
淳さんとは、別の番組で一度だけご一緒したことがあって、2回目にお会いしたのが、私が最初に「なれそめ」の収録に招いていただいたときでした。それなのに、もう長年知っているような感じがするくらい、すごく話しやすくて。そんなに話しやすい方と出会ったことがなかったので、びっくりしました。私のことを、ちゃんと「シャラ」って呼んでくれましたし。
——絶妙なタイミングで、シャラさんにも話を振ってきますよね。
そうなんですよ! 私が「それ、気になるな」というポイントをなぜかわかっていて、そういうタイミングで話しかけてくれるから、「どうして、今考えていることがわかるんだろう!?」って、いつも思っています。だから、私があまり変に考えなくても、いろんなコメントが自然と私から引き出されていることが多かった気がしますね。そういう意味で、私の見た目に惑わされず、リアルな自分を見抜かれている感じがしています。
淳さんの経歴も知っているし、広範囲の知識、知性を持っていることも元から知っていたのですが、MCとして番組を回すのがすごくうまくて、話をしてみると、とにかく頭の良い人だなという印象を改めて持ちました。そのうえで、きょうの公開収録では自分がHSP(Highly Sensitive Person=とても敏感な人)だという話をされていて、まさか想像もつかなくて、びっくりしました。自分をうまくコントロールできない部分とは別に、プロとして番組を回している……。そのことに感動を覚えましたね。淳さんに対する見方がちょっと変わったというか。きょう話を聞かせていただいた澤円さんもそうなのてすが、すごく頭が良くて、何でもできるエリートなのかと思っていたのが、その裏側にはいろんなことがあるんだという印象に変わりました。

——この「なれそめ」では、人と人の出会いをクローズアップしていますが、人と人がつながることに対して、シャラさんご自身がふだんから考えていることは?
うーん、考えていることがたくさんありすぎる(笑)。やっぱり、誰かと友達になる、縁をつなぐときに、できる限り相手の本心と触れ合えるような関係を築いていきたい、ということでしょうか。相手のことを本当は尊敬してないのに浅い関係だけは持つ、ということをしないように。それは相手に対しても失礼なことだから。現代ってすごく浅薄な関係を築きがちで、もちろん浅いこと=悪ではないのですが、私はリアルな、「この人は本当にそう思っているんだな」と伝わってくるような“本当の言葉”を使っている人と縁をつないでいきたい。「尊敬できる人と縁をつなぎたい」ということですね。
——最後にうかがいます。シャラさんにとって、“超多様性”とは?
私にとっての“超多様性”は、多様性という言葉が(声高に)使われなくなることですね。多様性、多様性って、大きく唱えられているのは、いまの世の中に多様性が失われているからだと思うんです。ひねくれてるかな、私(笑)。現代は意外と個人の時代ではなくて、インターネットによって私たちは群衆の単位で見られていて、みんなが溶け合っているというか、多様性を忘れてしまっているんじゃないのかな。
みんな一つの視点から、物事をとらえてしまうような。自分がSNSで見たものが真実だと思ってしまう世の中になって、正反対の意見が存在することを想像できない人が増えている。だから、多様性という言葉がこれだけ使われているんだと。それが使われなくなったときこそが「多様性があふれている状態」だと思います。そんな社会が来ることを願って、番組やネットを通じて私が信じる「私」をこれからも発信していきます。

モデル・文筆家。バングラディシュのルーツを持ち、東京で育つ。「人種のボーダーレス」をコンセプトに、独自の路線で雑誌やTVなど幅広いジャンルで活躍中。
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【番組HP】
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