○MC:田村淳
〇ゲスト:ryuchell、シャラ ラジマ

○ナレーター:水瀬いのり

本放送から1週間見逃し配信しています。見逃し配信はこちらから↓
https://www.nhk.jp/p/naresome/ts/KX5ZVJ12XX/plus/?cid=cchk-mgqc-20220910-steranet-01

年間に行うプレゼンテーションが300回を越え、“プレゼンの神”とも呼ばれている澤まどかさん。会社員時代にビル・ゲイツの名を冠した賞を受賞して、独立後は企業顧問や講演活動、またテレビ、ラジオにも多数出演するなど、幅広く活躍している。そんな彼のお相手は、理想の姿に仮装をする独自のアートで注目を集めている、造形作家の奈緒さん。いったい2人は、どうしてカップルに?

こちらは2人の「なれそめ」を語るのに欠かせない、「なれそメモ」!


▶出会い>>絶対に人生で関わらない

2人が出会ったのは、2007年のこと。円さんが働く会社に奈緒さんが派遣社員として雇用され、2人は1年間、同じオフィスで働いていた。とはいえ、それぞれ別のプロジェクトを担当していたため、社内で何度かすれ違う程度。会話をしたこともなく、特に奈緒さんは、職場で話題になるほど長髪でイケイケな雰囲気だった円さんに、「一生この人と関わることはない」と思っていたという。

奈緒「私は真面目な男性が好きだったので、確信を持って、この人とは絶対に人生関わらないと思ったんです

田村「確信を持って? 円さんはどうだったんですか?」
「確かに関わることはないかもしれないと思っていました。とにかくね、(奈緒さんは)服が派手だったんですよ。ブラジルで育ったというバックボーンがあって、色彩感覚が豊かなので、ど派手な花柄のシャツとかを会社に着てくるんだけど、ものすごい浮き方をしていたんです
田村「じゃあ、お互いに認識はしているけれど、『なんか派手な人いるな』『しゃべることはないだろうな』と、それぞれ思っている職場だったんですね。そんな2人がどうやって関わることになるんですか?」
「間に、人がいたんです。彼女が退職することになって社内を挨拶回りしていたとき、たまたま僕の同僚の女性のところにやってきたのを見て、あの派手な人辞めるんだ……と思って、同僚の女性に雑談がてら『彼女、辞めるんだね』と話しかけたんです。そうしたら『個展を開催するために辞めるそうです』と。何となく面白そうだから、その女性に何気なく『案内が来たら教えて』と言ったんですね」
シャラ「間の人に?」
「そうそう。そうしたら間に立ってくれた女性から連絡が来て、『個展は1年半先だそうです。なので、食事会をしましょう』と言い出して」
シャラ「間の人、気が利きますね」
「『つきましては、あなたとすごく仲がいい、イケメンの同僚を連れてきてくださいね』って、それだけが条件だったんですよ」
ryuchell「なるほど」
田村「言ってみれば、(円さんと奈緒さんは)ダシに使われた2人だったということですよね」

「完全に、そうです」
奈緒「間をつないでくださった方から、『澤(円)さんはしゃべるから、初対面でも大丈夫』って言われてたんですけど、いざ飲み会が始まったら、ほとんどしゃべらないんですよ。『話が違う!』と思って。しょうがないので、私は“捨て身”で、共通の知り合いの似顔絵を描いたりとか、しょうもない話を一生懸命頑張ってしていたんですよね」
「同僚2人は盛り上がってます、こっちはしゃべりません、こっちは必死に似顔絵描いています、みたいな、非常にゆがんだ世界観が繰り広げられていて(笑)」
田村「でも、どこかでエンジンかかり始めるんですよね? きょう、ずっとエンジンがかからない話じゃないですよね?」
全員 (笑)


▶交際>>恋心がないから

その後、2度ほど一緒に食事をした2人は、映画や音楽など共通の話題を見つけて会話を重ね、親しくなっていく。それでも奈緒さんが胸の中に持っていたのは、恋心ではなく、「一緒にいて、すごく楽だな」という思いだった。

奈緒「私は、すごく気ぃ遣いの神経質なので、誰かといると気を遣って疲れちゃうんですけれども、彼とは一緒にいてとても楽だなっていうのがありまして。そういうことは初めてだったんですよ。それまで私は恋愛をするときには、自分のイメージで『この人はこんなにすてきな人だ』って理想の王子様を作り上げてしまって、それで、いつもギャップに苦しんだりとか、ちょっと依存しちゃったりとかして。めちゃくちゃ苦しんでいました」

シャラ「すごくリアルな話だ」
田村「それは円さんも、同じように恋心がなかったんですか?」
「いや、さすがに僕のほうはありましたよ」
シャラ「ああ、あったんだ」
田村「高まり始めていたんですね」
「(奈緒さんとは)相当ギャップというか、温度差があったんですね。いま改めて確認できました(笑)
田村「でも、奈緒さん的には、まあ楽だから」
奈緒「ちょうどそのとき、今まで自分が好きになるパターンじゃない新しいパターンを試してみようって思ってたので。こんな人、珍しいなって」
田村「そして交際が始まるわけですね。で、交際から1か月後、円さんから奈緒さんに2つの提案が」
シャラ「2つの提案?」

田村「それが『短期的提案』『長期的提案』。めちゃめちゃプレゼンで使えそうな……。『え、なんですか?』って、身を乗り出すようなキーワードでしょう?」
ryuchell「気になる。何?」
奈緒「彼の行きつけのスポーツバーに突然連れて行かれて、カウンターで飲み物を頼んだあとに、『今から短期的提案と長期的提案をしたいんだけど、どっちから聞く?』って言われて」
シャラ「すごい。斬新な口説き方ですね」
奈緒「ちょっとびっくりして。何を言い出すんだろうと思ったんですけど、ちょっと怖いので『短期的なほうからお願いします』と」
全員 (笑)
田村「短期的な提案というのは、何だったんですか?」
奈緒『熱海に旅行行かない?』って言われて」
ryuchell「え~、そんなに“強め”で来たら、熱海なんて思わないし!」
シャラ「思わない思わない」
奈緒「そうなんです。ちょっと気が抜けて」
田村「交際して1か月後ぐらいだから、まあまあ『行ってもいいよ』ぐらいですよね」
奈緒「はい。『いいよいいよ』という感じで。『じゃあ、長期的は?』って聞いたら、突然『結婚しませんか?』と」

シャラ「ええっ? 熱海、からの結婚?」
田村「急にエンジンかかった!」
奈緒「私は、人を見極めるのにすごく時間がかかる人間で。なので、1年ぐらいはつきあってからそういうこと(結婚)を考えたかったので、ちょっと頭がパニックになってしまいまして。冗談だと思ったんです。この人、私をからかいにきてる、ほかの人もこの店に連れてきて長期的な提案をしているのかなって思ったわけですよ
シャラ「全員に長期的な提案(笑)!」
「これ、プロポーズですよ。それを、まともに受け取らないという。ただし、すぐにOKがもらえるとは僕もさすがに思ってなかったですね。交際期間は短いし、唐突だし。だから、とりあえずこれは投げとくし、『そのつもりなんですよ』を念頭においた状態で」
田村「なるほど、意思表示ですね。そのとき奈緒さんは、まだ短期的提案しか受け入れてないですよね」
奈緒「そうですね。とりあえず保留、みたいな」
田村「どこから、『長期的提案も受け入れていいかな』って思うようになっていくんですか?」
奈緒「個展が決まっていたものの、お金が全くなくて、そのころは電気を止められたりとか、いろんなものが払えない状況になってたんですよ。制作費に回していたので」
シャラ「切り詰めてやっていたんですね」
奈緒「なので、『結婚とか、ちょっと今、本当に考えられないから』みたいな。『お金をどうするのか考えなきゃいけないから』と言って、ちょっと保留にしたのもあったんですけど。そうしたら『会社を辞めて、時間を好きに使っていいし、お金は出すから』と言ってくれまして」
田村「僕が出すよ、と」
奈緒「『あ、のる~!!』みたいな」
全員 (笑)
ryuchell「めちゃくちゃ頼りがいがあるし、自分のやりたいことも応援してくれて」
田村「で、ちょっと戻ると、(一緒にいて)居心地がいいんだから」
シャラ「確かに!」

奈緒「あとは勢いかなと、最後は思いまして。ダメだったら離婚する、っていうのもあるし(笑)」
全員 (笑)


▶結婚>>秘密の実験

2008年に、2人は結婚。六本木のディスコを貸し切って、盛大なパーティーを開いた。しかし、結婚当初は、お互いの気持ちがすれ違うことも多かったという。そこに影響していたのは、それぞれの子どものころの経験。3人きょうだいの末っ子である奈緒さんは、母親との関係をうまく築けていなかった——。

奈緒「私は、小学5年生から中学2年生まで、3年間ブラジルにいたんですけれど、母は子ども3人を抱えてまったく知らない地球の裏側に突然行って、その中でもう余裕がなくなって、私に結構きつく当たったりしていたんですね。幼少期からずっとそういう感じで母と難しい関係で育ってしまったので、私は自己肯定感がマイナス無限大ぐらいで、常に『死にたい』って思うような子どもでした。なので、人を信じられないし、なるべく距離をとって、関わらないようにしようと思いながら、ずっと生きてきた。でも、結婚するとなると一緒に暮らさなきゃいけないので、どうつきあっていいのかわからなくて。最初は自分の思ったことも言えないし、だけど我慢しちゃうし、という、すごく気を遣っていて」

田村「そうか。交際のときは、どこかで会ってもそれぞれの家に帰るけど、結婚したら同居生活が始まって、『家族ってどうやって過ごせばいいのかな?』ということでしょ?」
奈緒「まったくわからなかったんです、私。どうつきあっていいのかが、人間としてわからない
田村「円さん、何か感じましたか? 結婚生活が始まったときに」
「僕もやっぱり余裕がないんですよね。自分は自分のことで精一杯なことに、結婚してから、より一層気づいた感じがあって。自己肯定感が低いっていうのも、実は、そっくりなんですよ。そもそも僕は『間違って生まれてきた』と、自分自身をすごく疑って生きてたんですよね。僕、円っていう名前でしょ。男ばっかり3人兄弟の末っ子で、娘がほしかった、っていうのはどうもあるみたいなんですね」

シャラ「あ~」
「違うって親は言っているんですけど、それはまあ真意はどうでもよくて、ただ周囲の親族とか知り合いとかは、『円くん、女の子だったら良かったのにね』って悪気なく言うわけですよ。それを気にしない子どももいると思うんですよね。だけど僕はいわゆるHSP(Highly Sensitive Person)と呼ばれる繊細な人間で、気にしなければいいんだけど、気にするタイプの子どもだったので、とにかく『自分が生きている状態が嫌だ』っていうのはずっと続いていました
田村「僕もHSPなんですよ。周りは『気にするな』って言うんだけど、気になってしまう人に対しての『気にするな』は、なんのアドバイスにもなってないと、ずっと思ってたんです。それでしょ?」

「それ! かつ、よせばいいのに、完璧を求めるっていうところもあって。自分にめちゃくちゃ厳しくなるんですね。それで、自分に対してすごく怒りを持ってしまうという。それが結局、彼女にもちょっと過度に……。八つ当たりするわけではないんだけれど、過度に共感をしてくれちゃうので、彼女もつらくなっちゃうんですよね」
ryuchell「2人が、それぞれ自分のコップに水が足りてない感じというか、カラカラな状態だから、『水をくれよー』『埋めてよー』みたいな感じがお互いにあって、余裕がなくて、ちょっと衝突があったということですか?」
奈緒「そうですね。『なんでわかってくれないの?』みたいのは、お互いやっぱりあったと思います

田村「今の話の流れから『秘密の実験』になかなか到達しないんですけど。僕の脳みそでは」
奈緒「それは私が、彼に気づかれないようにこっそりやっていた実験があるんです。私は親からずっと、自分の自信をそぐような言葉ばかりかけられて育って、自信が全くなくなってしまったので、『じゃあ、逆パターンをやってみたらどうなるんだろう?』って素朴に思いまして。彼のことをなんでもいいから褒め倒そうと思ったんですね。それで、私は自分に自信がないから、相手のいいところをツルツル褒められちゃうんですよ。例えば、(円さんが)『ソファーで寝落ちしちゃった』って言ったら、『ちゃんと体の声に耳を傾けてて偉いね』みたいな」
シャラ「すごい!」
奈緒「それをやり始めてたら、だんだん彼が変わってきまして。昔は彼が自分に対してすごく厳しくて、忘れ物をしたりすると、すごく自分を責めたりしていたんですね。それをかわいそうだなと思っていたので、そういうところもひたすら褒めて褒めて、というふうにしていたら、だんだん肩の力抜けてきたかなという感じがありました

田村「一見、澤円さんの経歴を見たら、なぜこれで自信を持てないの?って思われがちだけど、やっぱりそれは、円さんにしかわからない苦しみみたいなものがあって、それに奈緒さんが気づいて、これは違うアプローチにしてみよう、とにかく褒めようとなって、関係がだんだんと良くなっていったということですね。それを円さんは感じてましたか?」
「まさか実験だとは全然思ってなかったんですけど、なんか褒められて、『僕、いい気分だな』みたいなね。だって、朝起きるだけで褒められますから」
田村「起きられなかった場合は、なんて褒められるんですか?」
「それは『疲れてる体をいたわってて偉い』って褒められる。何をしても褒められるんですよ」
シャラ「考えついても、そうそうできることじゃないと思います。そんなに褒め続けることって」
ryuchell「絶対これは、愛がないとできない。普通だったら、3日目、4日目ぐらいで、朝起きないならフライパンでガンガンガン!って(笑)」

「結局、ひたすら褒めてくれる人に対して、ネガティブなことって言わないんですよね。大概のものを吸収してくれちゃうので。『じゃあ、もうちょっと頑張ってみようかな』っていうふうに、すぐ思えるようになるんですよ。あと家に帰るのが楽しみになりましたね。そうなってくると」

ryuchell「いやー、すてきー!」
シャラ「すごい話だと思う、これは」
田村「とやかく小言を言いがちじゃない? それは別に悪気があって小言を言ってるわけじゃないんだけど、ここを転換したっていう、この発想の転換力がすごい。奈緒さんにとって変化も多分にあったんじゃないですか?」
奈緒「私自身もすごくポジティブになりたいけれど、自分ひとりではどうにもできなかったので、褒め言葉をかけてもらえるとこれだけ自信がアップするんだという彼の姿を見ていたら、じゃあ私も自信をアップできるなって。彼が実証してくれたので、次は私も自分で、と

人生で何が大事かって、いい気分でいる時間が長いことって、すごく大事じゃないですか。それが提供されるっていうのは、何よりなんですよね」

田村「自己肯定感が低かった2人が一緒になって、もし実験しなかったら、自己肯定感はそのままだったかもしれないけど、実験が始まったことで2人とも上がっちゃったんですね。その実験で、こんな一面も認められるようになったそうです。それが『2人とも発達障害』ということなんですけれど」

奈緒「私は本当に勝手に勘違いをしてしまうし、人の言ったことを全然別に解釈してしまうというのがあって、近所にたまたまメンタルクリニックがあったので行ってみたら、もう『あなたは絶対にそうです』って言われたんですね。(円さんに)『発達障害の嫁なんていらない』って言われたらどうしよう?って、すごく不安だったんですけども、家に帰って『私、ADHD(注意欠如・多動症)だったよ』って言ったら、第一声が『羨ましい』だったんですよね

シャラ「えっ!?」
田村「それ、どういう意味だったんですか?」
「要するに、何かしらの、エビデンスっていうんですかね、証拠がほしかったっていうのがあるんですね」
田村「こういう理由だから、いつも忘れ物をしてしまうんだ、ということがわかるってことだ」
「落ち着きがないので、いろんな気になるものに目がいっちゃって、それで道に迷うわけですよ。それで訪問先に連絡をするんですね。『すみません、道迷っちゃいました』『わかりました。どこを通りました?』『えっと、道を……』『いや、そうじゃなくて、何が見えました?』『鳩とか、赤い車とか』『それでは説明になってません!』って」
全員 (笑)
「動いてるものとか、自分が好きなものに目がいっちゃうから、建物とか見てないんですよね、全然」
奈緒「でも(円さんも)ADHDなのでしょうがないんです、みたいに。それでちょっと自分に優しくなれる

田村「なぜそうなのか、理由がわかったからね」
奈緒「自分が頑張ってもできないことはしょうがないな、というふうに」
シャラ「私たちから下の世代は、たぶんそういう話を、みんなSNSとかで共有するけれど、円さんや奈緒さんの世代では、そういう理解って全然得られなかったと思うから」
「そうなんですよね」
シャラ「想像するだけでも大変。しんどいだろうなと思いました」


▶現在>>大いなる暇つぶし

2020年に、円さんは勤めていた会社から独立。現在は大学講師を務めるとともに、メディア出演など活躍の場を広げている。また、奈緒さんはワークショップを開催して、仮装アートを体験することで人生を前向きにとらえる場を提供。2人は東京以外に千葉などに家を持ち、自然に囲まれた環境で創作活動をしたり、仕事をしたり、思い思いの時間を過ごしている。

田村「この『大いなる暇つぶし』というキーワードなんですけれども」
シャラ「すごく気になる」
「会社勤めとかなんとかを1回リセットして、自分の好きなものでスケジュールを埋めていくっていう作業を、僕は暇つぶしだと思っているんです。暇なのでこれを(予定に)入れよう。暇だからこれもやろう、という感じで。人生って、基本的に1人あたりに割り当て1回で、絶対に“カウントダウン”です、と。だけど、その間はどういうふうにデザインしてもいいわけで、僕は1回それをリセットして、スケジュールを全部暇つぶしのために組んでみよう、と

田村「そしたら、仕事が暇つぶしの枠に入っていくから、取り組み方が全然違いますよね」
「違いますね。全部面白ければいいし、それで、何をやっても家に帰ったらこの人は褒めてくれるし」
田村「奈緒さんはどうですか?」
奈緒「そうですね。それで私たちは夫婦2人の生活で、私は『子どもはいらない』ということをプロポーズされた段階で彼に伝えていたのですが、普通だったら、やっぱり結婚すると子どもをほしい方が多いのかなと思っていたら、たまたま彼もそうだよと言ってくれて、すごく楽だったんですね。私自身が幸せな子ども時代を過ごしてないので、自分の子どもにハッピーな子ども時代を提供できるかどうか、わからないんですよ
田村「なるほどね」
奈緒「自分もすごくテンパりやすいので、子どもができたら、自分がされたのと同じことをしちゃうだろうなという思いもあったので、産まないのが子どもに対してできる、いちばんのことかなと思って。彼はそこに共感してくれたので、すごく助かっています」
田村「円さんもそうだったんですか?」
「そうですね。僕も、耳がちょっと極端なセンスを持っていて、大きい音とか高い音とかがすっごく苦手なんですね。それを聞くと、考えられなくなったり、体が動かなくなったりする、それぐらい苦手で、その中に残念ながら、小さい子どもの泣き声も含まれるんですよね。それが生活の中に入ってきたとき、うまいこと生きていくということにちょっと自信が持てない。だったら、関わり方を変えればいいかなというふうに思って。僕としては、極めて自己中心的に生きつつ、世の中には別の形で貢献していこうって、そういう考えになって、考え方としては(奈緒さんと)一致したのかなという感じですね
田村「選択肢ですからね、それは。お2人がそれを選択したのであれば、それがベストだろうし。授業とかもされているので、『そうか、違う形で貢献するっていうのがあるのか。なるほどね~』と思って、深くうなずいていました」
ryuchell「幸せって、それこそ『子どもができたら幸せだよね』とか、いろんな幸せの形、枠にはめがちなんですけど、それをお互いに共感できて、じゃあ一緒に歩いていこうと思い合えるような相手と出会えている感じがしました。すごくぴったりというか、だから、この2人にしか生まれない幸せの時間がひしひしと伝わってくるんだなって思いましたね」

シャラ「こうやって理解者がいる、2人がお互いの背中を預けることで、自分が好きに、自分らしく動けるってことって、可能になるんだなってすごく思いました。お2人を見ていて。家に帰ったら、そういう自分を癒やしてくれる場所がある、そういう人がいるからこそ、出せるものがあるんだろうなって、きょうは感じました」
ryuchell「う~~~ん、人生って、ムズい!」
全員 (笑)


▶▶2人にとって“超多様性”とは?

奈緒「マイナスをゼロに持っていくことです」

奈緒「普通の人が生きている位置をゼロだとすると、私はそれよりもずーっと下の場所でうごめくように生きていたのですが、彼と暮らし始めて、褒め実験が効いて、今ようやくゼロの位置まできて、そこからポコっと顔を出して、楽しく人生を生きれるようになった状態なんです。ゼロまで行ったら、みんな勝手に飛んでいけるので、そこに行くまでのお手伝いができたらいいなと思っています」
田村「ゼロまで行けないから苦しんでる人がたくさんいる、ということですね。ゼロはゼロで、そこが基盤だから」
奈緒「私自身がそうだったので。ちゃんと愛情を注がれて育った人たちは、ゼロからスタートできるんですけれども、私たちみたいな人たちは、マイナスからスタートしなきゃいけないというハンディーがあるんですよね」

円「僕の場合は、自分の人生を生きることですね」

「これを、僕はいろんなところで口にしていて、当たり前のことを言っていると感じるかもしれないんですけど、本当にそれを意識している人って意外と少ないな、というのが最近の気づきなんですよ。ほかの人が決めたルールに自分が合わせていくことを、完全に否定してるわけではないんですけれども、『そうしないと失敗である』と定義するのは、ちょっと違うんじゃないかな、と思っていて。自分自身の人生というのは、自分が決めたあるルールに従って生きて、『失敗しようと成功しようと、それは自分の人生だからいいや』って思えるのが、いちばんハッピーだと思うんですよ。で、僕のかみさんはどういう状態でも褒めてくれるんで、それは保証されている、と。これがいちばん幸せなことだよな、っていうのが今強く言いたいところですね」


本放送から1週間見逃し配信しています。見逃し配信はこちらから↓
https://www.nhk.jp/p/naresome/ts/KX5ZVJ12XX/plus/?cid=cchk-mgqc-20220910-steranet-01
【番組HP】
https://www.nhk.jp/p/naresome/ts/KX5ZVJ12XX/?cid=cchk-mgqc-20220910-steranet-02