これまでに放送された「素朴なギモン」とその答えを、忘れないように復習しておきましょう。
きゅうりやなす、にんじんなどをぬか床に漬けて作る〝ぬか漬け〟。 独特の香りと酸味がなんともいえぬ味わいです。でも、ぬか床に入れて置くだけで、野菜がおいしくなるのは、一体なぜなのでしょうか?


答え:野菜と水分のうまみが入れ代わるから

詳しく教えてくれたのは、長岡技術科学大学の小笠原渉教授。
日本人は、古来、しょうゆやみそなど、微生物を利用してさまざまな食品を作り出してきましたが、ぬか漬けは、中でも健康にいい「発酵食品のキング・オブ・キング」だと言います!

そもそも「ぬか」とは、精米したときに出る胚芽や皮の部分。

「ぬか床」は、それに塩と水を加えて練ったものに、野菜くずを入れ、野菜の表面についた乳酸菌と酵母を移して作ります(捨て漬け)。つまり、あの独特の酸味やほうじゅんな香りは、発酵によって増殖した乳酸菌や酵母の働きによるものなのです。

ぬかのもとである胚芽や皮の部分には、鉄分やカルシウムなど、豊富な栄養素が含まれている。この栄養によって、野菜から移った乳酸菌と酵母が増殖。 さらにうまみ成分である昆布を加えれば、ぬか床の準備は完了!

しかし、おいしさの理由というと、ポイントとなるのは、ぬか床に含まれる塩分。塩が持つ〝浸透圧(塩分の濃さが違う液体を同じ濃さにしようとする働き)〟の作用が、ぬか床に入れた野菜から水分を抜きます。
そして代わりに、ぬか床の中にしみ出ている昆布のうまみ、酵母で作られた香り、乳酸のほのかな酸味、さらに、ぬかが持つビタミンやミネラルまでが、野菜の中に入ってくるのです。

塩分濃度が濃いぬか床に、塩分濃度が薄い野菜を入れると、浸透圧の働きによって、野菜の水分はぬかのほうへ。そして、入れ代わりで、ぬか床にしみ出ているうまみや香り、栄養素などが野菜の中に入ってくるというしくみ。

これが、もともとうまみが強くない野菜が、ぬかに漬けることで何倍にもおいしくなる理由です。

(NHKウイークリーステラ 2021年4月16日号より)